中富良野の人

「本当の美味しさ」と「サスティナビリティ」を追求したオーベルジュ

佐藤 公亮

佐藤 公亮 さん

苫小牧市出身。東京の会社を退職。2シーズン山に籠りスノーボードのインストラクター資格などを取得後、ペンション支配人を経て料理の世界に。イタリアン・フレンチなどの店で修行し、2013年7月、妻の美智子さんと共にAuberge erba stellaをオープン。

理想とする宿ができる場所を探し求めて

「北海道で、畑や庭のある宿を経営したい」と思い描いていた公亮さん。北海道らしい景色に囲まれていながら、自分たちが生活していく上での利便性や、趣味であるスノーボードができる場所を求めて、美瑛・富良野エリアで土地を探していました。そうして辿り着いたのが、中富良野町の鹿討農場地区。2012年に移住し、自分たちで畑を作りながらオーベルジュが出来上がっていくのを見守りました。移住した頃から今も尚、刈った草や野菜の茎などは雪の下に寝かせ、ゆっくりと土に還るのを待ち、環境に負荷をかけないように少しずつ畑の面積を広げています。「畑に使う化学的な薬品は、人間の効率を考えているだけです。これは料理に使う化学調味料も同じことで、効率を優先させると必ず味を落とします」と、公亮さんは話します。

 

人が「おいしい」と感じるもの=身体が喜ぶもの

建物の構図、インテリア、料理など、センスを要する仕事は公亮さんが担当。経営や広報、接客などの仕事は、前職が企業の採用担当という美智子さんの得意分野。互いの得意なことを尊重し合い、2人のオーベルジュはつくり上げられています。多くの宿泊客が目当てとするのは、食事の時間。野菜ソムリエプロである2人が「本当においしいものを味わってもらいたい」と、オーガニックの素材を使用した料理を振る舞います。信頼を置く道内の生産者から仕入れる食材もありますが、美智子さんが中心となり、肥料や農薬を使用しない自然栽培のスタイルで年間100種類以上の野菜を栽培し、「本当の美味しさ」をお客様に提供しています。「料理を食べると、具合が悪そうだった方も元気になりますよ」と、美智子さんは満面の笑みで話してくれました。

 

冬の間の過ごし方

観光地として名高い富良野エリアにあると、GWから10月頃までは大忙し。プライベートな時間を過ごす余裕はありません。だからこそ、2人は冬の間の過ごし方を大切にしています。毎年11月には道外に旅行に出かけ、気になっていたレストランや宿、農場を訪ね、もてなされる側の目線でさまざまなものを見て回ります。2人の食に対する考え方を地元の人にも知ってもらえるよう、味噌づくりなどの料理教室を開催したり、共通の価値観で話せる友人たちとの交流も冬の間に満喫します。

 

道内初の「BIO HOTELS JAPAN」認証

2018年にはアメニティもオーガニック製品にシフトし、BIO HOTELS JAPANの認証を道内で初取得したerba stella(国内では3施設目)。人の健康と自然環境、どちらにも配慮された宿であることの証です。使用食材の75%以上がオーガニック、という基準も「普段から気にかけていることだったので、認証基準もそれほど高いハードルには感じませんでした」と話す佐藤夫妻。中富良野町に行き着いたことも、宿の在り方も、心から「おいしい」と言えるものを追及する2人にとって、すべてが自然な選択でした。2人の妥協のない丁寧なおもてなしは、訪れる人を心から安心させてくれるのです。

 

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