中富良野の人

自然と人の営みが織り成す、美しい景観を伝えたい

日向 猛

日向 猛 さん

中富良野町出身。愛知県の大学を卒業後、再び北海道へ。旭川で企業に勤めた後、1983年に故郷である中富良野町にUターンしました。自営業の傍ら、一般社団法人なかふらの観光協会の会長をはじめとする、地域振興に深く携わる団体に所属しています。

「観光」を通じた故郷のまちづくり

お気に入りのロードバイクにまたがり、スポーティな格好で颯爽と現れた日向猛さん。中富良野生まれの中富良野育ち、小さい頃から自然が大好きだったそうで、今回も「大のお気に入り」という町営ラベンダー園(冬は北星スキー場)の展望台でお話を伺いました。大学進学を機に一度は離れた故郷。実家の建築板金業(金属を加工し、建築物の屋根・外壁などを作ったり修理したりする仕事)を継いだのは、24歳のとき。趣味はスキーや自転車など。35年ぶりに始めたという自転車は、スキーのための体力づくりなのだとか。商工会青年部に入ったことをきっかけに、持ち前の行動力で長年に渡って地域の魅力発信に携わってきました。なかふらの観光協会会長、商工会副会長、中富良野スキークラブ会長、富良野スキー連盟副会長、神輿会「天翔会」会長…。本業に加えてさまざまな組織の中核を担い、忙しくも充実した日々を送っています。

 

妻が教えてくれた、故郷の美しさ

日向さんを支え続けてくれたのは、亡き妻・眞知子さんの存在でした。2人が出会ったのは、旭川で務めていたおもちゃ問屋でのこと。「子どもたちに、夢を伝える仕事。俺は営業で、奥さんは事務だった」。その後、家業を継ぐために故郷に戻ることを決めた際に2人で中富良野へ、24歳で結婚します。眞知子さんを伴って初めて実家を訪れたときのことが、今でも忘れられないと日向さん。季節は初夏、自家用車で道路を走りながら目にした中富良野の風景。「『こんなにキレイなところが、あったんだ!』って感動してくれてね。今考えればその時だったのかな、この景観をたくさんの人に知ってほしいって思うようになったのは」。たくさんの人に中富良野を訪れてほしい、その魅力を感じてほしい。日向さんのエネルギーの源には今も、眞知子さんの笑顔があるのです。

5月中旬の早朝、水田に映る芦別岳・富良野西岳(日向さん撮影)。

 

日常の中で、雄大な自然を体感する暮らし

「ここ(町営ラベンダー園展望台)からの、この角度。個人的には、一番いいなと思ってる」。誇らしげにそう言って、ニッコリ笑う日向さん。視線の先に連なるのは、雪を戴く大雪山・十勝岳連峰の山々です。十勝岳、富良野岳、旭岳…。それぞれに異なる様相で、静かにそこに聳え立っています。まるで、中富良野の町を見守るかのような山々。日向さん曰く、町営ラベンダー園展望台からは正面すぎず、斜めすぎず、程よい角度の山並みを見渡せるのだとか。朝日が昇る時間帯、運が良ければ雲海を見ることもできると言います。そして、山々に抱かれた中富良野の田園風景の美しさも格別です。「人の営みがカッコいい」。日向さんはそんなシンプルな言葉で、感動を表現します。美しい自然と、それらに抱かれて暮らす人々の暮らしがここにあるのです。

10月中旬の日の出の時間、町営ラベンダー園展望台から望む雲海と十勝岳連峰(日向さん撮影)。

 

これからの町の観光について目指すもの

現在の課題は、観光と農業をいかにリンクさせるかということ。その観点から、最近では自転車で町内を巡るイベント「なかふらのサイクリング」を企画しています。自転車でのんびり町内を巡り、各地のチェックポイントをクリアしていくという内容です。チェックポイントとなるのは、観光スポットや地元飲食店のほか、丸太伐り体験などの北海道らしい体験ができる場所。「なかふを体感してもらう」をキーワードに、自転車ならではの「時間」を感じることができます。ドライブで通り過ぎるのとはまた違った、「中富良野の景色」に気づいてもらいたい。そんな思いが込められたイベントです。他にも、日向さんの中にはさまざまな楽しい構想がいっぱい。話を聞いているこちらまで、わくわくしてきます。「中立の立場から、観光を通じてまちづくりに貢献したい。地域の人たちは、本当にいい人たちばかりだから、その繋がりに助けられています」。故郷に戻って35年あまり。「戻ってきて良かった」。展望台からの眺望を前に、日向さんは優しい笑みを浮かべていました。

なかふらの観光協会